Koizumi Jr’s not”sexy,” poor English

環境大臣になり、のこのこ(自分ではたぶん”颯爽”と)国連の会議に出かけていき、国際的な場面で発言するレベルに届いていない英語力でインタビューを受け、中身と英語力の不足を内外にばらしてしまった。(英語力が弱いのを自覚しているAbeの方がまし??)<英語の勉強のために掲示>

青山学院大学 米山明日香 准教授の解説:

写真・図版

小泉進次郎環境相の発言要旨

小泉進次郎環境相がニューヨークで開かれた国連気候行動サミットで、「気候変動問題に取り組むことはきっとセクシーでしょう」と英語で述べ、国内外で波紋を呼んだ。セクシーという言葉は、政治家として適切だったのか。

一部SNSやメディアでは「小泉進次郎環境大臣が気候変動問題をセクシーに扱うべき」として、話題をさらっています。いくつかのメディアやSNSでは、誤解があったと記事を書き換えているところもあるようですので、誤解も減っているようです。(誤解なく伝えているメディアももちろんあります)ではなぜ上記のように発言に誤解があったのでしょうか。 なぜ誤解されたのでしょうか。

「sexyに」気候変動問題を・・・進次郎大臣の真意は?

(19/09/23) https://youtu.be/MXaVwWocUT4  @YouTubeで小泉進次郎 氏の問題となったsexy発言の映像はこれ。

1. sexyが問題というよりは

そもそもsexyには「性的な、セクシーな」という意味のほかに、口語でexcitingとかappealingといった意味で使われることもあります。例えば、オックスフォード米語辞典(2nd edition)にある例としては、I’ve climbed most of the really sexy west coast mountains. (試訳:本当に魅力的な西海岸のほぼすべての山に登ったことはあります)のように使われます。またロングマン現代英英辞典(5th edition)の例には、one of the sexiest companies in Seattle(試訳:シアトルでもっとも話題の会社の一つ)があります。このような意味もあるので、小泉氏も「魅力的な」といった意味で使ったのでしょう。そもそも文脈からすると、女性の言葉の引用のようです。(2.の英文をご覧ください。sheと言っています)
(加筆:twitterでご親切な方が、その女性とはChristiana Figueresで、Christiana氏は”Let’s make green sexy”の提唱者であると教えてくださいました。つまりその言葉を引用してsexyといったわけです。)以下がそのビデオです。

Rio+20: Christiana Figueres, UNFCCC Executive Secretary https://youtu.be/gH9RxESkh7A  @YouTubeさんから YouTube ‎@YouTube50:26 – 2019年9月24日Twitter広告の情報とプライバシー米山明日香 Dr Asuka Yoneyamaさんの他のツイートを見る

さらに以下のビデオを見ると、Christiana Figueresさんが隣にいるので、指をさしてsheと言っていますが、sheではなく、sheという代名詞よりはDr. Figueres(ProfessorならProfessorの方が好ましい)の方が誤解を与えません。大臣として重要なのは、話し手である二人(小泉大臣とFigueres氏の二人)あるいはその場にいた人のみがわかっていればよいということではなく、それが記事になった際に、誤解を与えないようにするかに気を配ることではないかと個人的には思っています。したがって、現在、メディアやSNSなどで、「性的な」「セクシーな」と小泉氏が発言したことに注目するのは少し問題の論点がずれています。


2. 実際の小泉大臣の使用例


実際に小泉氏が使った文脈は以下の通りです。音声から書き起こしたので、少し違うところもあるかもしれませんが、ご容赦ください。誤解をしたメディアの一部は、5文目の On tackling such~からしか記事にしていないものも午後に見たところ散見されました。On tackling on this issue, everything gonna be fun. And she added also ‘sexy.’ I totally agree with that. 
In politics there are so many issues, sometimes boring. On tackling such a big-scale issue like climate change, it gonna be fun, it gonna be cool, it gonna be sexy, too. (試訳:このような問題を解決するとき、すべては面白くないといけません。彼女は「セクシー」にねとも言いました。政治においてはたくさんの問題がありますが、時々それは退屈なものもあります。気候変動のような大きな問題を解決するにあたって、その問題は面白く、かっこよく、sexyでなければなりません)

On tackling on this issue, everything gonna be fun. And she added also ‘sexy.’ I totally agree with that. 
In politics there are so many issues, sometimes boring. On tackling such a big-scale issue like climate change, it gonna be fun, it gonna be cool, it gonna be sexy, too. (試訳:このような問題を解決するとき、すべては面白くないといけません。彼女は「セクシー」にねとも言いました。政治においてはたくさんの問題がありますが、時々それは退屈なものもあります。気候変動のような大きな問題を解決するにあたって、その問題は面白く、かっこよく、sexyでなければなりません)

※On tacklingではなく、In tacklingが文脈上、正しいでしょう。On~ingは「~するとすぐに」、In ~ingは「~するとき、~する(した)際に」。※on this issueではなく、onは不要。他動詞のため。※it gonna beではなく、it’s gonna beが正しい。※gonnaではなく、gotta be(=got to be)と言いたいのだと思いますし、一部ではそのように伝わっていますが、音声を聞くと発音がgonnaになっています。

では、なぜ「魅力的な」と小泉氏が言いたかったのが、誤解を招いて、世界のメディアの一部が話題にしたかというと、小泉氏のitがclimate changeを指してしまっている(と考えられる)ので(本来はsolution of climate changeと言いたかったのでしょうが)、「気候変動はsexyであるべきだ」と誤解されてしまったのです。言いたかったのは、「気候変動問題解決をsexy(=appealing)にすべきだ」ということでしょう。それでも前後関係や背景などがわからない人にとっては???なのです。また、そもそもitが何を指しているのかも不明なのも誤解された要因でしょう。その結果、言葉が一部でひとり歩きしてしまったというわけです。

またsexyを「引用」としたかったのであれば、英語圏では両手の人差し指と中指で ”    “というジェスチャーをするのです。しかしそれがなかったこと、あるいはso-calledといった語がなかったことから誤解されてしまったのです。あるいは、sexyの後に、as Dr.(ProfessorならProfessorのが好ましい)Figueres called のように言えばよかったのです。

今回の問題はsexyという語の誤用云々というよりも、世界の一部のメディアから内容が誤解されてしまったことが問題なのです。小泉氏が言いたいことは、おそらく        In politics, there are so many issues, sometimes boring. In tackling such a big-scale issue such as climate change, what we can do is to tackle the issues properly. However,  to solve the environment issues together is sometimes fun, cool and appealing or so-called “sexy” , so we should solve our issues together. 
(試訳:政治においてたくさんの問題があり、時々それは退屈です。気候変動のような大きな問題を解決するにあたり、私たちができることはその問題を適切に解決するということです。しかし、環境問題をともに解決することは、時として楽しく、かっこよく、魅力的なこと、言い換えればsexyでもあるので、我々の問題をともに解決しましょう)ではなかったかと推察します。ただ、なんせ言葉が足りないので、補うのも難しいのです。つまり、「言葉を補うのが難しい」ということは、「言いたいことがよくわからない」という結論が導かれてしまいます。ここが今回の問題なのです。

3. 今後の課題

しかし、今回の問題は言葉の選択が誤解を与えたか否かというだけの問題ではありません。むしろ小泉大臣の大臣としての危うさと脆さを露見したことに注目すべきではないかと思うのです。小泉大臣は今回、映像で(0’59~)「英語は絶対話せなきゃだめだと思います。通訳がいるってだけで、もうあの場では勝負にならない。国連の中での存在感を発揮していくということが見せられたと思います」と述べています。

確かに「英語ができる大臣」は”sexy”(「魅力的」という意味で)です。(ただし、個人的にはsexyという語をこのように使うのは好みません。なぜなら、もともとは「性的な意味で魅力的」という意味なわけで、アメリカでは口語で使いますが、イギリス人はあまり使いません。このような差があるだけでも国際舞台での使用は誤解を与える危険性があるので避けたいところです)

しかし、口語過ぎる英語、誤解されるような英語を話すならば、やはりプロの通訳者を使うべきではないかと個人的には思っています。私自身も通訳者をしていたことがありますが(と言っても駆け出しです)、通訳者は(特に大臣を担当する通訳者は)相当な訓練を受けているので、インフォーマルな場では通訳者がいなくても問題はありませんが、フォーマルな場ではぜひプロの通訳者を使ってほしいと思います。

学生であれば、間違ってもよいからどんどん話しなさいというところではありますが、小泉氏は「大臣」なのです。したがって、「国連というフォーマルな場で英語を話せば勝負できる」とか「勝ちか負けか」とかという問題ではなく、母国語(母語)でもよいので、言語のプロである通訳者に訳してもらう、あるいは、誤解されないような英語力を身に着けることが重要ではないかと思います。

つまり、国の代表として行っている場なので、自分の勝負の場ではないですし、個人的に勝負をかける場ではないということを心に留めておく必要があるのではないかと個人的には思っています。やはり大臣なのですから、フォーマルな場で(少なくともテレビクルーが入っているような場で)gonna(gotta)とかlikeとかといった口語的すぎる言葉のチョイスは、避けるべきだと考えます。

追記:もちろんどのように気候変動問題に取り組むかという内容が重要ですが。



米山明日香先生のBoris Johnson英語の解説も面白い

B. Johnsonの英語について 10/9
音声学者が見るボリス・ジョンソンの人となり 
  • 2019/07/24 15:57

このジョンソン氏、ある意味でとても「興味深い人物」です。以前、CNN English Express2017年2月号のp47にジョンソンの「話し方のテクニック」の項目で、「経歴と話し方の特徴」を書かせていただきましたが、この人物、本当に「不思議」なのです。CNN ENGLISH EXPRESS (イングリッシュ・エクスプレス) 2017年 02月号 [雑誌]CNN English Express編朝日出版社2017-01-06

「イギリスのトランプ」と一部では言われますが、トランプ大統領よりはかなりの「やり手」「策略家」とみた方がよいでしょう。その根拠は、ジョンソンが選ぶ「発音」に見ることができます。

1. 略歴
その前に、まず経歴を見てみましょう。お父様は欧州議員で、先祖にもそうそうたる面々がいます。その中にはジョージ2世もいるなど貴族に連なる血筋もある家系で、ニューヨークで誕生します。その後、イギリスにもどり、イートン校からオックスフォード大学ベリオール・カレッジを卒業でしています。この経歴だけを見ても、イギリスの「エリート」の典型であることがわかります。ちなみにイートン校とは名門のパブリックスクール(私立中等高等学校)の1つで、これまでにも19人の首相を輩出するトップ校です。ジョンソンは20人目にカウントされます。卒業生の中には、4度首相になったグラッドストンや、大英帝国をさらに拡大することに貢献したといわれるセシル、最近で言うとデイビッド・キャメロンもいます。また政治の分野にとどまらず、「オトラント城奇譚」を書いたホレス・ウォルポール、ロマン派の詩人として知られるシェリー、「ケインズ経済学」で知られるケインズもこちらの出身です。したがって、世界の歴史に一役買う人物を多数輩出している学校であることがわかります。それから、ウィリアム王子など王族、貴族の御用達の学校として知られます。

次にジョンソンが通ったオックスフォード大学ベルリオール・カレッジも名門大学として名高いところです。よくオックスフォード大学出身というと、「すごい!」と単純に捉えがちですが、イギリスでは「どこのカレッジの出身か」ということも重要な意味を持ちます。しかし、このベルリオール・カレッジは雅子皇后も一時期留学なさったことがあり、ノーベル賞受賞者、3人の首相を輩出する名門カレッジなのです。政治経済学者として世界的に知られるアダム・スミス、現在のミクロ経済学・マクロ経済の発展に貢献したヒックスがここの出身と聞けば、いかに名門カレッジかがわかるでしょう。このようにジョンソンは「エリート」なのです。しかし、発音にそれが表れていないのが興味深いところです。

2. 発音
イギリスでは21世紀になった現在でも、発音からその人の階級や出自がわかるといわれます。最近ではその傾向が薄まったとはいえ、ジョンソンの経歴や年齢(55歳であること)を考えると、いわゆる典型的なイギリス英語「容認発音(Received Pronunciation、RP)」で話すのが通常です。同年代で、イートン校出身で、カレッジは違うものの同じオックスフォード大学出身のデイビッド・キャメロン元首相はRPを話します。しかし、ジョンソンは典型的なRPではなく、むしろカジュアルなイギリス英語を話します。

昨日の勝利宣言は少々フォーマルな英語で話していたことは興味深い点ではあります。俗な言い方をすれば「ボリスもきちんとした英語が話せるのね」といった感じですが、それでも従来の英国首相が話す英語発音ではない点に注目したいところです。普段、イギリスのエリートが使う典型的なイギリス英語RPで話していないところに、ジョンソンの「賢さ」が表れています。これはどういうことでしょうか。

3. ジョンソンの策略?
ドナルド・トランプがアメリカの大統領に就任したのは「ポピュリズム」の蔓延ゆえと言われています。今回、イギリスの首相にボリス・ジョンソンが就任したのも、この「ポピュリズム」ゆえでしょう。つまり、現在、大国の長に就くには「大衆」に推される必要があるのです。
それを考慮すると、今やイギリスの3%しかRP話者がいないとされる中で、エリート臭のする発音で国民に語り掛けることが有利に働かなくなっています。こうしたことがイギリスで実際に起きたことは、ある意味でイギリスという国が大きな転換期にあることがわかります。なぜなら、言語における変化は、すなわち文化の変容を意味し、これはそうそうに起きることではないからです。その意味で、ジョンソンがRPではなく大衆的な発音で話すこと、エリート臭を感じさせないモップのようなヘアスタイルやファッションセンスは、イギリスの大衆に親近感を与えるのです。この対応に失敗したのが、前首相のメイ氏でしょう。前メイ首相の評判が悪かったのは、やはりオックスフォード大学出でRPを話すことから、一般の受けしなかったことも大きな要因と言えます。イギリス人の中には「メイ首相はsnobである」という声も多く聞かれるのはそういった事情もあるのです。実際には、ジョンソン氏とメイ氏を比較すると、メイ氏はグラマースクール(公立学校)出身であることからも、ジョンソン氏の方が圧倒的に「エリート」であることを忘れてはいけません。

ところで、発音というのは、「環境」に大きく影響を受けます。ということは、ジョンソン氏の周りは、経歴から見るよりもはるかに「大衆」が多いことがうかがえます。この周りの「大衆」が今後の首相としての働きに、「吉」と出るのか「凶」と出るのか、見守る必要があります。まずは、BREXITをどう処理するのかが見ものです。本人はtwitterの中で「10月に完全離脱」と明言していますが、大きな困難が待ち受けていることは言うまでもありません。