◆「天皇と象徴を考える」(考論 長谷部×杉田)+岩井克己
(考論 長谷部×杉田)+岩井克己 天皇と象徴を考える お気持ち表明を受けて
2016年9月18日05時00分
皇位継承などをめぐる憲法と法律の規定/天皇陛下が表明したお気持ち(骨子)
天皇陛下が先月、生前退位の願いを強くにじませた「お気持ち」を表明した。長谷部恭男・早稲田大教授(憲法)と杉田敦・法政大教授(政治理論)の連続対談は今回、昭和天皇の時代から皇室を取材してきた岩井克己・朝日新聞皇室担当特別嘱託を交えて、天皇制の現在と今後の課題などについて論じてもらった。
■反省すべきは「政治の不作為」 杉田/生前退位、特措法の検討は邪道 岩井
岩井克己・皇室担当特別嘱託 陛下は8月8日、生前退位の意向を強くにじませたお気持ちを表明されました。朝日新聞の9月の世論調査では、実に9割が生前退位に「賛成」しています。ただ、今回の表明が、「天皇は国政に関する権能を有しない」とする憲法4条に違反する恐れはないでしょうか。退位の意向が報道先行で表に出るまでの経緯も不透明ですし、天皇が望めば政府はその通りに動くのだという認識が広がるとすれば問題です。
長谷部恭男・早稲田大教授 道路交通法などと違って、憲法違反か否かは、条文を直接の根拠にスッパリと線が引けるわけではありません。個別の事情を勘案しながら総合的に判断せざるを得ない。今回は天皇が「個人として」の考えを述べられた。明言はされませんでしたが、要は、今の制度には不備があると指摘されている。日本国憲法が想定する天皇の象徴としての地位を安定的に維持するためには、これまで行ってきたような規模と内容の公務を続けるしかない。しかし私は高齢で無理になってきている、このままでは天皇としての役割や地位を安定的に支えられないと。このことを提起できるのは、天皇自身しかないでしょう。メッセージの内容も、日本国憲法を出発点とする真っ当なもので、非難されるべき点があるとは思えません。Read More →